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2018.12.12

プロジェクトマネジメントとプロダクトマネジメントにおけるQCD

西 武史

取締役CTO
西 武史

学び



こんにちは!株式会社diffeasyCTO西です。twitterはこちら→@_takeshi_24
この記事はBacklog Advent Calendar 201812日目の記事です。

 

プロジェクトマネジメントに関する記事ということで、「プロジェクトマネジメントとプロダクトマネジメントにおけるQCD」について、以下の内容で書きました!

 

QCDとは何か?

製造業関連の方はすでにご存知かもしれませんが、QCDとは
Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)
の頭文字です。

 

製造業の設計・生産時に気をつけなければならない3つの領域と言われています。
必要以上に品質を高めて、大きなコストを投資して、納期を過ぎてはいけません。
納期やコストを厳守するあまり、品質が低くなってしまってもいけません。

 

IT業界においても、プロジェクトをマネジメントする上でこの3つの領域をいかに管理するかは非常に重要なポイントになります。

 

プロジェクトマネジメントにおけるQCD

IT業界では主に受託開発案件において、お客様の要望に応じて、QCDを最適化しつつ開発プロジェクトを進行するために、PM:プロジェクトマネージャーという役割の人が存在します。

 

プロジェクトマネージャーの役割は広く、ここで一つ一つについて詳細には述べませんが、最大の役割として、プロジェクトマネージャーは、定められた納期までに製品を完成させることに責任を負います。

 

不確実性に対応する

ITのシステム開発プロジェクトに携わったことがある方であればわかると思いますが、プロジェクトスタート時は大きな不安があります。

  • このシステム納期までにちゃんと完成するのか・・?
  • この問題は誰が責任を持っていて、誰に聞けば良いのか・・?
  • この問題はどのような手法で解決するのか・・?

など不安は様々です。

 

この不安の正体は「不確実性」です。

 

プロジェクト開始時点では不確実なことが多く存在します。

  • 何を?
  • どのように?
  • 誰が?(誰に?)
  • いつまでに?

エンジニアリングとはこれらの不確実性に情報を与えて不確実性を無くしていくことです。
プロジェクトマネージャーの役割はチームのコミュニケーションを円滑にし、メンバーに対して適切な情報を与え、主に納期に対する不確実性を下げて、納期までにシステムを完成させることになります。

 

この辺りは広木 大地さん著「エンジニアリング組織論への招待 ~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング」という本に書かれていて、エンジニアの皆さんにおすすめなので、是非ご購読ください。

 

プロダクトマネジメントにおけるQCD

ここまで、お客様の要望に応じてシステムを開発する受託開発プロジェクトにおけるプロジェクトマネジャーの役割とQCDについて簡単に紹介しました。
では、自社サービス/新規サービスにおいてはどうでしょうか?

 

自社サービス/新規サービスでのPM

自社サービス/新規サービスにおいてもPMと呼ばれる役割の方は存在しますが、こちらのPM=プロジェクトマネージャーではなく、PM=プロダクトマネージャーです。
新規サービスの場合、受託開発と違い、厳密な納期は基本的にありません。

 

プロダクトマネージャーは納期の不確実性ではなく、「開発するサービスが市場に受け入れてもらえるか?」という市場の不確実性に対応します。

 

受託開発であれば、発注者側のニーズが確実にありますす。
それに対して新規サービスは今までに誰もやったことのないサービスなので、それが市場に受け入れられるか、不確実です。

 

また、受託開発であれば、システム化以前に作業にどれだけのコストがかかっていたかがわかるので、費用対効果は計算しやすいです。
一方の新規サービス開発の場合、開発にかけた投資をどれだけの期間で回収できるか、そもそも本当に回収できるのか、予測できません。

 

これら市場の不確実性に対応するのがプロダクトマネージャーの役割です。

 

新規サービスにおけるQCDの罠

QCDは必ず相関します。
機能に対して、投資する資金が少ない、もしくは納期が短ければ、品質はそれなりのものになってしまいます。
品質を上げるためにはそれなりの開発予算と開発期間が必要になります。

 

プロジェクトマネージャーは発注者側の予算や納期を考慮した上で、最適な品質を満たすために機能を選定し、スケジュールを立てて、プロジェクトを進めていきます。

 

それに対して、プロダクトマネージャーは、納期がないので、このQCDのバランスをいかに設定するか?が重要になります。
私も過去色々新規サービス開発に携わってきましたが、ここで陥りやすいQCDの罠があります。

 

Quality(品質)の罠

リーンスタートアップなどの言葉があるように、MVP(Minimum Viable Product)と呼ばれる必要最低限の機能を満たしたプロダクトを早めにローンチし、市場のフィードバックを早い段階で得る手法が増えてきました。
これによって、サービスにおける仮説を早い段階で検証し、無駄な機能にコストをかけることなく、サービスの軌道修正やもしくは撤退など早期に判断できます。

 

ただMVPでも完成度が低すぎると、ユーザーは利用してくれません。
そしてサービスから一度離れたユーザーは二度と戻ってきてくれません。

 

Cost(コスト)の罠

とはいえ、完璧なシステムを目指すあまり、大きなコストをかけてしまうのも問題です。

 

プロダクトの可能性を信じ込むあまり、完璧なサービスを提供しようとコストをかけて開発したけれど、誰にも使ってもらえない・・・
これも悲しいことですね。

 

Delivery(納期)の罠

「完璧なシステムではないと、利用してもらえない」という思いが強く、いつまでも絶賛開発中で、リリースしないサービスも今まで多数見てきました。

 

ある程度の品質は必要ですが、完璧なものを求めるあまりいつまでもリリースしないうちに、時代が変わり市場のニーズが変わることもあり得ます。
ベンチャーやスタートアップの場合は特に、資金的な体力もない中で、完璧なプロダクトを延々作ることはできません。

 

最適なタイミングで最適なサービスを市場に投入することが必要になります。

 

新規サービスにおけるQCDの罠にどう対応するか?

では、新規サービスにおけるQCDの罠にどう対応するか?について、弊社diffeasyで私が考慮している点について記載します。

 

サービスのコアを明確に

新規サービスの開発をスタートすると、
「こんな機能もあった方がユーザーが喜ぶんじゃないか?」「この機能があると面白い!」という意見がどんどん出てきます。
これが出ること自体は悪いことではなく、むしろ歓迎すべきことです。

 

しかし全てを受け入れていくと、ユーザーが求めるものと違ったサービスが完成したり、いつまでもリリースできない事態に陥ってしまいます。

 

そこで、サービスのコアとなる機能を明確にすることが重要です。

 

チャットサービスで、スタンプが豊富に用意されていたり、ポイントなどのインセンティブが用意されていても、肝心のチャットがろくにできないのであれば、話になりません。

 

コアとなる機能を明確にし、優先度を設定、付加機能は後のバージョンにまわすなどのマネジメントが必要です。

 

市場の反応がすべて

例えば、小学生をターゲットにしたサービスを考える際に、いくら大人が集まって色々と議論したところで、本当に小学生が求めるものになっているかはわかりません。

 

やはりユーザーの声を早く聞くことが重要です。
弊社diffeasyのプロダクトでは、リリースのバージョンを細かく設定し、なるべく早めにユーザーの意見を聞くことを大事にしています。

 

例えば、「大会運営向上心」というスポーツ大会運営サービスでは、当初は試合のリアルタイム動画配信や詳細な得点状況など試合分析をやることを見込んでいました。
そこで、α版としてまずは既存のサービスを利用した動画配信や、iPadでリアルタイムで得点入力してそれをディスプレイに表示できる得点板を最小限の機能でリリースしました。

 

知り合いの道場の試合で実験的に導入したところ、リアルタイムで動画配信することは辞めてほしいという意見が出ました。
地方の試合では保護者がボランティアで得点入力するケースが多く、詳細な試合ルールを知らないので、詳細な得点状況を試合の進行に合わせてリアルタイムで入力することが不可能なこともわかりました。

 

一方で、大会前の申し込みや参加者の集計にはとても困っていて、スマホからの申し込み機能が大変喜ばれることも確認できました。

 

早い段階で市場に部分的にでも公開することで、このような反応を得ることができ、本当に必要な機能が何で、不要な機能は何か、把握できます。

 

その他新規サービスで考慮することは?

チームのモチベーション維持

新規サービスにおいてはモチベーションをいかに維持するか、が重要になります。

 

「ゴールが正しいのか?」という不確実性、不安が常に付きまとうので、自分たちがやっていることが本当に正しいのか?疑問に思う瞬間が多々あります。
また、今日明日すぐにそのサービスがヒットするということはほぼありません。

 

地道な努力や検証が不可欠です。

 

モチベーションが下がってしまうタイミングが必ず訪れます。

そこで以下のような対策を取っています。

  • サービスの目的を明確化する。
  • 常に何のためにやるのかを振り返る。

 

何のためにこのサービスをやるのか?を明文化し、迷った時や不安な時は常にそこに立ち返って考えることが重要だと考えます。

 

課題は本当に存在するのか?そのサービスは本当に課題を解決するのか?

実は課題が存在しないというケースもよく見かけます。
こんなサービスがあると便利なんじゃないか?楽しい世の中になるんじゃないか?
という思いからスタートしたものの、誰にも使ってもらえずに人知れず終わっていくサービスは星の数ほどあります。

 

時代の流れに対してタイミングがあっていなくて受け入れられなかったサービスも多くあります。

 

しかし、ほとんどのサービスはそもそも課題が存在しなかった、というケースが多いように思います。

 

実際のサービスを例に説明しにくいのですが、例えば、冷凍庫を開発したとして、エスキモーの方々に冷凍庫を売ることができるか?と考えます。
どんなに機能が素晴らしくても、そもそも課題が存在しなければ、多くの人が利用するプロダクトにはなりません。

 

そもそも新規サービスをマネジメントできるのか?

そんなこんなでこのブログをまとめていたところちょうどtwitter上で、新規サービス開発において「プロジェクトマネジメントという言葉に違和感ある」というご意見を見かけました。
これはすごく納得です。

 

そもそも新規サービスはゴールが明確ではなく、正解がありません。
正解があれば全ての新規サービスはうまくいくはずです。

 

誰も正解がわからないものを1人のプロダクトマネージャーが本当にマネジメントできるのか?

 

答えは「No」だと思います。

 

受託開発であれば、ある程度トップダウンでプロジェクトマネージャーが納期に向けてプロジェクトをマネジメントすることは可能だと思いますし、重要な役割だと思います。

 

しかし、新規サービスの場合は、トップダウンだとうまく行かない可能性が高いのでは?と思います。
トップも正解を知らないから。

 

プロダクトマネージャーはプロダクトのビジョンを明確にし、新規サービスにおいて最適なQCDを見極めて意思決定することは重要な役割ですが、「マネジメント」よりは「ファシリテーション」という言葉がしっくりくるような気がします。

 

プロダクトファシリテーター

Wikipediaによると、「ファシリテーション」とは

会議、ミーティング等の場で、発言や参加を促したり、話の流れを整理したり、参加者の認識の一致を確認したりする行為で介入し、合意形成や相互理解をサポートすることにより、組織や参加者の活性化、協働を促進させるリーダーの持つ能力の1つ。 コミュニケーションスキル以外にも、ルールが必要な場合の内容設定や補助、プログラムのデザイン、進め方や、さらに会議の場所や参加者の選択、日程のデザインなど、オーガナイザーやリーダーの機能を担う。

とあります。

 

新規サービスにおいても、「マネジメント」ではなく「ファシリテーション」によって、プロダクトの開発に携わるメンバーのコミュニケーションを円滑にし、モチベーションを高め、メンバー全員で不確実な中でも最適と思われる方向に向かって、チームを活性化させる「プロダクトファシリテーター」とでも言うべき役割が必要なんじゃ無いか?と思います。

 

・・・と色々と持論を述べてきましたが、これも正解がないことなので、試行錯誤しながら進めていくしかないですね。

 

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実践型PMアカデミー


今回は主に新規サービスにおけるプロダクトマネジメントについて書きましたが、株式会社diffeasyでは経験豊富で優秀な講師による「実践型PMアカデミー」を開催しています。
実プロジェクトから学ぶワークショップ形式の実践的なプロジェクトマネジメント講習です。
※詳細はお問い合わせください。

 

IT以外の分野でもプロジェクトマネジメント力は必要なスキルになりますので、ぜひ皆さん、ご参加ください。

 

PMFukuoka 福岡プロジェクトマネジメント勉強会


diffeasyのPMメンバーが主体となって、「PMFukuoka 福岡プロジェクトマネジメント勉強会」というコミュニティを運営して、プロジェクトマネジメントの知見を共有するための勉強会を定期的に開催しています。

 

こちらもご興味ある方はぜひお気軽にご参加ください。

 

Backlog World 2019

『Backlog World 2019 -プロジェクトマネジメントx働き方改革-』2019年1月26日(土) 秋葉原UDX 4F ギャラリーネクストで開催
2019.1.26(土)に東京秋葉原で開催される「プロジェクトマネジメントの祭典 Backlog World 2019」にて、昨年Backlog World内のGood Project Award最優秀賞受賞者として基調講演させていただくことになりました。

 

今年のテーマは「プロジェクトマネジメント×働き方改革」ということですので、こちらも是非ご参加ください!

written by

西 武史

取締役CTO
西 武史

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